エアマックス95というネーミングは日本発だった『エアマックス クロニクル』

エアマックス クロニクル (ベストスーパーグッズシリーズ・23)エアマックス クロニクル (ベストスーパーグッズシリーズ・23)

ベストセラーズ 2013-01-28
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 原宿をスニーカーショップだらけにしてストリート・裏原系ブームの礎を築いたと 言われているエアマックス95。ピーク時には30万円というプレ値がつき、 「エアマックス狩り」という事件も起きて社会現象になりました。

 エアマックス95はバスケットシューズが人気を独占していたスニーカー市場に ハイテク系ブームを起こしたエポックメイキングなスニーカーなのですが、 日本のスニーカーシーンが世界中から注目されるきっかけとなったスニーカーでもあります。

 それはエアマックス95はファンが呼び名を変えたナイキ史上初のスニーカーであり、 その発端が日本のファッション誌にあったからです。それが『エアマックス クロニクル』の 「あのエアマックスブームとは何だったのか?」で語られております。

エアマックス95って呼んだのは、スクエアが出てきて分類がすごく難しくなったから。 エア180の時点で既に複雑だったんだけど、それまでは、エアマックス1、2、3って呼んでいた。 で、スクエアをどこに入れるかで悩んだ結果、年号にした方がわかりやすいって ことになったんだよね。イエローグラデって呼んだのも、雑誌って、 見出しの短い分の中にいかに情報を詰め込むかが大切でしょ。だから裏ダンクも、 リバースダンクより呼びやすかった。

こう当時を振り返るのはブームの最前線にいた『Boon』のライター岸氏。 これがきっかけとなりエアマックス95(年号で分ける通称)が世界的な通称になり ナイキもそれを正式名称として採用するにまで至ったそうです。 それまではバリエーションが豊富でも「エアマックス」で統一されていました。 日本の熱狂的なブーム、世界に発信された東京のスニーカーカルチャー、 共振する世界中のスニーカーファン。それがネーミングに関して厳格なナイキの方針を 曲げたというのは凄いですよね。ファンによって正式名称が変えられた唯一のモデルだそうです。


 本書が企画されたきっかけは90年代のファッションが注目を集めている、 ミタスニーカーズがエアマックス95のプロトタイプを復刻、エアマックス2013は 5年ぶりのニューソールであることなどいろいろあるかと思いますが、 やはり90年代のトレンドやランニングブームの影響なのでしょうね。

 私もエアマックス95の洗礼を受けた世代ですけども、学校にエアマックスを はいてくる人がいようものなら学年やクラス関係なく噂が入ってくるくらいでした。 昼休みに見に行こうぜ~とまるで芸能人的な扱いでしたね(笑)

 そんなことを思い出しながら本書を読んでいたのですが、エアマックス95を はいているイチローが登場したり、初期ロットはシングルステッチというウンチクがあったり、 広末涼子着用モデルうんぬんなどあり懐かしくなりました。

 95のディーテルの変遷、エアマックスシリーズのカラバリやコラボ・別注のカタログ、 エアのテクノロジーの話、業界人の昔話や着こなしスナップなど包括的な アプローチで面白いムックです。スニーカーファンはマストな一冊だと思います。

千年間の服飾史をレビューした労作『ファッション・ブランドとデザイナーと呼ばれる戦士たち』

ファッション・ブランドとデザイナーと呼ばれる戦士たちファッション・ブランドとデザイナーと呼ばれる戦士たち
塚田 朋子

同文館出版 2012-12-12
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<目次>

第1章 きもの文化の国で闘う三宅一生と川久保玲
第2章 二一世紀の日・欧・米のファッション・ニュース
第3章 藤原氏全盛期から鎖国(海禁)前までの日本と欧州のファッション・ニュース
第4章 鎖国(海禁)期の日本と欧州と「アメリカ」のファッション・ニュース
第5章 帝国主義時代の日・欧・米のファッション・ニュース
第6章 一九四七年から二〇〇〇年までの日・欧・米のファッション・ニュース 終章 前衛よ、永遠に!

 「1千年と2000年代前から愛してる」という著者の叫びが聞こえてきそうな労作です。 日本は00年代に入る前、90年代は「失われた10年」と言われておりますが (日本のファッション業界は90年代からオワコン扱い)、著者は00年代前のファッションも好きだ、 むしろ1千年前ですら愛でてみせると服飾史をまとめております。

 「ファッション・ブランドとデザイナーと呼ばれる戦士たち」というタイトルや表紙の 雰囲気からデザイナーの話が中心と思う人もいるでしょう(本屋ではモード・デザイナー コーナーに置かれているくらい)。しかし残念ながら華やかなファッションの話はほとんどでてきません。 マーケターの視点で読み解くガチ服飾史(ビジネス寄り)です。絹製品、ギルド、呉服商などの 話がたくさん出てきます。お洒落なタイトルと表紙に騙された気分でござる(笑)

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スニーカー愛が足りないと感じた『スニーカー文化論』

スニーカー文化論スニーカー文化論
川村 由仁夜

日本経済新聞出版社 2012-12-26
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 今期90年代のストリートファッションが流行るならスニーカーが注目を集めるはず。 トラッドの影響か革靴がここ数年ずっと人気ですが、90年代はスニーカーシーンが 盛り上がっていたなぁと懐かしく感じ手に取ったのが本書『スニーカーの文化論』です。 スニーカーの勉強をしておこうかなと思ったわけです。

 まず「はじめに」を読むとこんなことが書いてあります。

だが筆者はスニーカーマニアでもコレクターでもない。 スポーツウーマンでもないので実はスニーカーは2足しか持っていない。

自身がマニアではないからこそ客観性を持ってリサーチできるという話になるのですが、 たった2足というセンセーショナルな数字をわざわざ出すということは、 スニーカーについて調べているうちにすっかりその魅力に取りつかれ、 今では20足、いや200足までコレクションが増えました的な美談が「あとがき」に書いて あるのだろうなと読みますと・・・。

スニーカーの魅力が理解できるようになり、自分も購入したいと気持ちもありますが、 収集を始めたら終わりがなく、中毒的になるようなので、 ひたすら傍観者でいたいと思います。

2足という前フリはなに!?傍観者宣言とか書く必要あるの?と椅子から転げ落ちそうになりました。 どうやら「サブカルチャーとファッション」という著者の研究過程でスニーカーが気になったようです。

 スニーカー好きを敵に回すような発言なので、どうしても突っ込みどころを 探しながら読むような視点になってしまうのですが、 それらをピックしながら本書の紹介をしていこうと思います。

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『相対性コムデギャルソン論』に見る「かわいい」の重要性

相対性コム デ ギャルソン論 ─なぜ私たちはコム デ ギャルソンを語るのか相対性コム デ ギャルソン論 ─なぜ私たちはコム デ ギャルソンを語るのか
五十嵐太郎 浅子佳英 桑原茂一 柳本浩市 千葉雅也 菊田琢也 平芳裕子 小澤京子 坂牛卓 入江徹 森永邦彦 松田達 井伊あかり 永江朗 成実弘至 井上雅人 長谷川祐子 藤原徹平 本間直樹 木ノ下智恵子

フィルムアート社 2012-12-17
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 『相対性コム デ ギャルソン論』刊行記念トークショーが各地で開催されています。 2月6日はスタンダードブックストア心斎橋で研究者編が行われるようです。 皆さんはもう読みましたか?

 今回はこの『相対性コム デ ギャルソン論』の感想をElasticの視点で書こうと思います。まず初めにあとがきを読みますと、本書の刊行には2つの背景があったようです。 1つは「パリコレ前夜のコムデギャルソンに言及したい」。 もう1つは「従来のファッションジャーナリズムとは違う視点を入れたい」。 そんな編者の思いが形になったのが本書です。

 「映画・アニメの前日譚ブームに影響されたのですね、わかります」と次にまえがきを読むと、 「本書は必ずしもコムデギャルソンの批評集ではない」との但し書きが。 どうやら、エッセイ、対談、座談会となんでもありの形式のようで、 「外野が語るコムデギャルソン」「70年代というギャルソン外伝」的な、 そんな「外」からギャルソンに迫っていくのが本書の売りになっているようです。 ガチ批評なら「ノイズ」で片付けられそうな箇所が本書の主役です。

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実用性重視のカジュアル指南本『成功している男の服選びの秘訣40』

9割の人が間違った買い物をしている 成功している男の服選びの秘訣40 (講談社の実用BOOK)9割の人が間違った買い物をしている 成功している男の服選びの秘訣40 (講談社の実用BOOK)
宮崎 俊一

講談社 2012-12-14
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 松屋銀座の「銀座の男」市の仕掛け人、宮崎俊一氏が記すお洒落指南本の第2弾が登場。 『成功する男のファッションの秘訣60』 の反響が想像を超えるもので、「休日の服」をテーマにしたOFFのカジュアル編を出す運びになったようです。

 第1弾はコンパクトで無駄がなく合理的なスーツ指南本でした。 第2弾も現実性に即した実用性重視の指南になっております。 内容も前著の延長上にあり、サイズ感、ドレス感、耐久性(長年着ていると体に 馴染みそれがこなれて見える)の3つがポイントになっており、それらに加え、 なるべくコストパフォーマンスに優れるアイテムや日本製を推しているのも本書の特徴です。

 男性が記すお洒落指南本はインポート至上主義的な一面がありますので日本製推しは珍しいです。 ブランドの権威に頼らず自分が良いと思うアイテムを勧める。 バイヤーならではの視点で男のワードローブの基本となる「万能アイテム」のセットの組み方を指南する。 ブランドやアイテム単品はよく見ますが、ワードローブ単位(アイテムの数や構成)は ありそうでなかったお洒落指南ではないでしょうか。

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