ユニクロを凌駕するコスパ最高の古着5選

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掘出し物のサントーニ3,400円

 「コスパ最強」の決まり文句と共にコーディネートの部品として使えるというユニクロ。 それに関してはもう決着がついた感じでいかにユニクロを上手く使いこなすのかという ステージに入っているかと思いますが、そのポジションは何もユニクロの独断場ではなく古着の土俵でもあります。 ユニクロが最強なら古着は最高です。

 安くてベーシックな服なら古着です。ジーンズを例に出すまでもなく、 男の定番服は無数のブランドに繰り返しサンプリングされ社会に浸透していったものであり、 そのオリジナル(原型)は古着というアーカイブの中にあります。 もちろん焼き直された数だけ類似品も出てくるのでベーシック、 スタンダード、クラシックといった類の服ほど古着で見つけやすいのです。

 「安さ」「一点もの」「エイジング」だけではなく「スタンダード・ベーシック」。 ここにも古着の魅力があります。その点があまり知られていない、 もしくは皆が皆ユニクロの素晴らしさを語るので古着が埋もれてしまっている、 そう感じましたので、いち古着好きとして今回はユニクロをモノサシに古着を 語っていきたいと思います。

 画像はイタリアの名門サントーニの革靴。磨く前なので細かい傷がついておりますがこの状態で出てきました。 こんなイギリス靴っぽいエッグトゥも作っていたんですね。 おそらく試し履き程度のデッドストックで3,400円。ユニクロのスニーカーは3,229円なので値段的に大差なし。 安さという点ならユニクロと十分勝負になります。

 と、こんな感じで掘出し物を紹介していたらきりがなく再現性がないので、 いわゆる古着の定番の中から5つに絞って紹介したいと思います。

※メンズしか登場しません


■ダウンベストは現行とサイズ感があまり変わらない

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茶タグにMade in USA表記アリなのでおそらく80年代6,700円

 古着のアウター、特にコートやジャケットはシルエット(ディテール)がモロに年代を主張しますが、 ダウンベストは本来アウターではなくミドルレイヤーなので着丈の短いアイテムが多く、 現行と着丈が変わらない、むしろ短いことまであるので今の服とバランスを取るのが容易です。 これが袖もあるタイプだと全体的にサイズ感が大きくなります。 現行のダウンは薄くてスタイリッシュなモノが多いので余計に着膨れているように見えるんですよね。 着方次第なんですけど難しいのでベストの方をまずはオススメします。

 私が好きなのはTHE NORTH FACE茶タグの4ポケ。ノースフェイスの古着と言えば茶タグですが、 そのタグに価値があるというよりも、このダウンは65/35ベイヘッドクロス、アロータック、 旧ロゴボタンなど見所が満載でして(シェラパーカはベストセラーなので気になる方はぐぐってください)、 シェラベストも復刻モデルまで出ている名作です。着れば着るほど良さがわかってくるスルメみたいなやつで、 65/35クロスの手触りもボタンの配置もポケットの切り口も愛おしくなってきます。 さすがヘビーデューティーの時代。こいつは長く愛せるタイプです。

 欠点としては立ち襟タイプなのでパーカが合わせにくいくらい。 横のホグロフスと見比べてもらうとわかりますが、襟までダウンが ぎっしり詰まっていてボリューミーなのでパーカのフードだとかさばって野暮ったくなるのですね。 その代わり襟のボタンを閉めさえすればマフラーの必要性を感じないほど鉄壁の防寒性です。

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どちらもMサイズ

 サイズ感についてですが、今っぽいダウンベストとしてホグロフスのインナーダウンを並べてみました。 ノースフェイスの着丈は63㎝、身幅が55㎝で現行のキャンプシェラベストと同じです。 ホグロフスの方は66㎝と53㎝です。古着だからといって一概にサイズ感が大きいとは限らないんですね。 ただ私のようにMが体に合う人は問題ありませんがSサイズ以下は争奪戦になります。 レディスのMやLの方がサイズ感に納得できる場合もあるので着てみるべし。

【オススメ】THE NORTH FACEのシェラベスト
【値段】5,000~15,000円
【見つけやすさ】人気のため自分のサイズが残っているかどうか。ボタンが黒のタイプは希少
【チェックしておきたいところ】ダウンの残量、表生地の汚れや破れ
【キーワード】茶タグ:70~80年代中頃の目印でこの時代のモノは品質が良いとされている

※値段は状態やサイズは無論、為替の影響でもかなり変動するので参考までに


■古着のネルシャツにはロマンを求めたい

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もちろん退色していない綺麗なネルシャツも出てくるHerman's 4,200円

 ダウンベストに合わせる定番シャツには、シャモアクロスシャツ、デニムシャツ、 そしてネルシャツがあります。正直、ネルシャツでユニクロのコスパを越えろと言われたら私は涙目になってしまいますので、 古着にはロマンを求めてください。ロマンとは服の持つ表情や雰囲気と言ってもいいかもしれません。 その良さは品質に担保される類のものではなくほとんど偶然の賜物です (ヴィンテージを研究し雰囲気を意図的に狙って出しているブランドは総じて高額)。

 古着とユニクロのネルシャツの違いはシルエットもそうですけど、 わかりやすい点だと第1ボタンと第2ボタンの間隔やポケットの位置ですね。 古着のボタン間隔はほぼ等間隔でポケットの位置は低めです。 こういうちょっとしたディテールの違い、他には生地、裾マチ、チンスト、 ダブルステッチ、皿ボタンなど、古ければ古いほどクラシックなディテールを備えており、 全体で見たとき差となって雰囲気に現れます。そこに痺れて憧れを抱けるようなモノに出会えるかどうかです。

 ネルシャツは古着の雰囲気テイスティング入門みたいなアイテムです。 ワインと同じで素晴らしいものに出会えれば価値観や見方が変わり、 古臭い古着のネルシャツも違って見えるようになっていきます。 大量のネルシャツの中からこの配色ええやん!と手に取るとまたBIGMAC!みたいな。 おそらく言葉にできない何かを感じ取ってるんですよね。 その「何か」が現行にはない魅力だと思います。

 ブランドで有名なのはBIGMAC、FIVE BROTHER、Levi's (アラスカシャツ)、King Kole、winter kingあたり。 特にBIGMACとFIVE BROTHERが2強状態というくらい古着屋によく置いてあります。 値段にこだわるなら90年代のFIVE BROTHER。BOOKOFFなどのリサイクルショップで 1,000円程度で見つかることもあります。普通の古着屋だと3,000円くらいでしょうか。

 ネルシャツは柄とサイズとロマンで決めればいいと思いますが、 もしBIGMACを買うのなら皿ボタンにはこだわりたいところ。 このブランドは70年代くらいの玉数がまだ多い年代にも皿ボタンがついておりますので。 ベークライトが、ネコ目が、イチゴボタンがとか、ボタンを楽しむのも古着の醍醐味であり、 ユニクロのネルシャツに皿ボタンは確かなかったと思います。 ダブルステッチはあって驚きましたが。ユニクロ凄い。

【オススメ】70年代のBIGMAC、90年代のFIVE BROTHER
【値段】3,000~8,000円、ヴィンテージになると数万になることも
【見つけやすさ】60年代くらいまで古くなると数が減りロマン度とお値段UP
【チェックしておきたいところ】サイズ感。縮んでいる場合もよくあるのでサイズ表記は参考までに
【キーワード】皿ボタン:お皿のようなボタンってそのままやないかい!70年代以前のモノによく見られる


■汎用性の高さは501に匹敵、519という名作パンツ

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一番人気の黒(品番58)は希少8,800円

 ジーンズ、ヴィンテージチノ、ガウチョパンツ、ジョガーパンツと次々とヒットを 生み出すユニクロに対抗できるパンツは501や軍パンくらいしかちょっと思い浮かびません。 とりあえずボトムスに何を持ってくるか悩んだらその2本を持ってくるというのは ファッション好きあるあるだと思いますが、 小奇麗な格好には崩し以外で使いにくいんですよね。そこをカバーするのがLevi's 519という名脇役です。

 519と言えば5ポケットの細畝コーデュロイパンツであり、きれいめに合わせてくれと言わんばかりにリベットがついておりません。 画像の519は前の所有者がドレスパンツ感覚で使っていたのかセンタープレスがビシッと入っております。 古着には前の所有者の癖がついていることがありそれが着方を教えてくれるのも面白いところ。

 519はカラバリも豊富で古着屋に行けばグラデーションになって積まれています。 一本一本色の褪せ方が違うので微妙な色目まで選べるのです(笑) 基本的に黒っぽい色を買っておけば問題ないのですが、 ファッションスタイルや季節に合わせて色を選べるのも519の良い点です。 青系、赤系、茶系、緑系…と色は無数にありしかも色の褪せ方に個体差まである。 古着の519よりカラバリの豊富なパンツはこの世に存在するの?というレベル。 これにはさすがのユニクロも勝てないでしょう。

 シルエットもスリムタイプなのでコーディネートの邪魔にはなりません。 その使い勝手の良さから気付いたら519ばかりはいている人もいるくらい古着界では定番のパンツであり、 無数のブランドがサンプリングしております。

 古着屋に行けばリベットのついているコーデュロイも見つかりますが、 その多くは517(ブーツカット)で裾が広がっており今のトレンドからは外れます。 もしくは新しいモデルでスキニータイプの511。または551。 だいたい出てくるのはこのあたりです。551と519は似ておりますが、 551の方はユーロ企画であり生地がコットン100%という違いがあります(519の初期モデルもコットン100%だけどまず見つからない希少種)。 なお古着好きがよく言っている「42TALONが~」という呪文はジップのことです。 年代にこだわる方のチェック項目の1つです。

 519はスリムなシルエットと言っても裾幅は20㎝を若干越えております。 気になる方はお直しに出すなりロールアップで誤魔化すなりした方がより今っぽい着方ができます。 なお脚に張り付くようなスリムなシルエットや裾幅が20㎝を切るようなパンツは 古着(レギュラーのメインである70~90年代のMADE IN USA)にはなく、 それは現行で探すしかありません。それだけ今のパンツは細いのです。

【オススメ】Levi's 519、551
【値段】4,000~8,000円(黒と初期モノは1万をこえることも)
【見つけやすさ】LEEのコーデュロイとセットでどこにでも置いているレベル
【チェックしておきたいところ】店内が薄暗いので股の薄さと微妙な色目にご注意を
【キーワード】42TALON:60年代~80年前半の目印、オートマチック式


■ベーシックなニットなら古着の出番

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HERMESのファクトリーブランドとして知られるBALLANTYNE6,500円

 「明日、もう一度来て下さい、本物のカシミアを見せてやりますよ」と 某山岡さんが熱弁をふるいそうなジャンルがニットです。 今は「カシミアタッチ」という言葉もあるように、カシミアっぽい手触りのアクリル素材も開発されておりますが、 素材偽装のニュースも多いので古着屋に本物を触りに行くだけでも価値があると思います。 現行はカシミアティッシュの延長上的な感じで無機質なモノも多いのですが、 昔のカシミアは動物の毛というものを強く感じさせあたたかみがあります。 使い込まれたものはトロトロで素晴らしい手触り。2ply、3ply(≒肉厚)のカシミアを使った 贅沢なニットもよくあり暖かいんですよね。コスパ的に考えるなら、 無地のベーシックなニットなら全部古着でいいんじゃないかと思うレベル。

 ブランドはPRINGLEとBrooks Brothersが多く、 他にはLyle&ScottやBALLANTYNEも見つかります。ブランドにこだわる必要はなくスコットランド製ならだいたい質が良いです。 とは言ってもやはり品質には結構ばらつきがあるものなのでブランドより手触りで決めれば良いかと。 お前が信じるお前を信じろ!と熱い人も言っております。

 欠点としては、年配が好むような地味な色目やデザインが多いこと。 今風の発色の良い色はあまり見つかりません。黒も結構探すのが大変です。 虫食いやタバコ穴が多いのも難点でお直しは高くつきます。 テンションがかかりにくく目立たない位置ならリペアしないのも手。

 カシミア以外にもJOHN SMEDLEY のシーアイランドコットン、 INVERALLANのフィッシャーマン、L.L.Beanのバーズアイ、 coogieの総柄、A-1ミリタリー、50年代のレタードなどニットは狙い目が目白押しです。 ブランドにこだわらなくてもスコットランド製の質の良いニットがたくさん出てくるので 古着のニットはオススメしたいですね。

【オススメ】スコットランド製のカシミアニット
【値段】5,000~10,000円
【見つけやすさ】BALLANTYNEはやや見つかりにくい
【チェックしておきたいところ】穴、生地が薄くなっている箇所はないか
【キーワード】スコットランド製:ニットの聖地


■ALDENのような革靴が欲しい?ならばアメリカの古靴だ!

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HANOVER L.B.Sheppardのデッドストック7,500円

 スーツや紳士靴のようなクラシックの世界ではデザインがある程度限られており、 ディテールの特徴でアメリカ系、イギリス系、イタリア系とあるのは皆さんもご存知かと思います。 ALDENはアメリカンクラシックを象徴するブランド(デザインの大枠が昔から何10年も変わっていない)であり、 冒頭でも述べたとおり、ベーシックやクラシカルといった類のものは探せば似たようなデザインが出てきます。 中でもFOOT SO PORTのVチップはALDEN のVチップと似ていることで有名です。

 画像はHANOVERの上級ラインL.B.Sheppard。多少の細かい傷や色抜けはありましたが磨くとこうなりました。 そしてそれっぽくなるように古靴特有の平紐を丸紐に代えてオーバーラップで結んでいます。 HANOVERは70年代にClarksに買収されたブランドなので少なくとも40年前の靴ですが、 この迫力のあるコバ、ぼってりとしたトゥ、革の質感、 まるでALDEN990を若干スマートにしたような感じに見えませんか?作りも申し分なし。ALDEN1足でこの靴が1ダースも買えてしまうという。

 古着の定番短靴と言えばU.S.NAVYのサービスシューズで今も1万円くらいで見つかりますが、 近年のアメトラブームの影響か若者にも革靴の人気が出たため、 積極的に革靴を仕入れる古着屋が増えました。今はサイズも状態もブランドもある程度選べますが、 いつ枯渇するかわからないので今のうちに確保しておいた方がいいかも。

 ブランドは、アメリカ靴ならALDENを筆頭に、Allen Edmonds、 Johnston & Murphy、COLE HAAN、FLORSHEIMなど困らない程よく見ますが、 HANOVER、Bostonian、Nunn Bush、FREEMAN、WRIGHT、French Shriner、Nettletonなど少し知名度が落ちると 安く置いている古着屋もまだまだあります。例えばJ&Mが2万円で目立つところに置いてあり、 ノーブランドコーナーにBostonianが4千円で販売されていたりとか。

 別にALDENを買ってしまっても構わんのだろう?という人は、 古着屋だとモデルによっては3万弱、デッドストックとなると5万円オーバーを覚悟する必要があります。 つい数年前までオールデンは2万円以下でもそれなりに見つかりましたが、 さすがに3万円を越えると、Jalan Sriwijaya(現行の革靴でコスパが高い靴として有名)でいいかなとなるので、 コスパという点ではオススメできない感じ。

 余談ですが、USA製のスニーカーは年々高騰しており仕入れが難しいそうです。 古着屋でコンバースやバンズのデッドストックを安く入手できる時代は終わったのかもしれません。 なのでコスパにこだわる方は革靴狙いが良いかと思います。 興味のある方は「LAST issue 06―男の靴雑誌 靴都市・東京の現在」が古靴特集をしております、参考までに。

【オススメ】アメリカの古靴
【値段】5,000~30,000円(デッドストックで+1~2万円することも)
【見つけやすさ】ブランドにさえこだわらなければ簡単に見つかる
【チェックしておきたいところ】状態のチェック箇所が多いためデッドストックにこだわりたい
【キーワード】デッドストック:倉庫の片隅で眠っていた未使用品


■おわりに

 探すのに時間がかかりそれをコストに組み込むなら古着の優位性は失われますが、 プロダクトの質と値段の安さをとことん追求するなら古着に辿りつくはずです。 そしてコスパ最高なら古着好きの多くが、ダウン、ニット、革靴の3つを挙げるはずです。 私は汎用性の高さから519、ダウンベストに合わせるアイテムとしてネルシャツを残り2枠に選びましたが、 他にも、例えば、春先ならLeeのチェトパ、Gapのデニムアノラック、フランス軍のバスクシャツ、 FARAHのスラックスなどコスパに優れた古着はまだまだたくさんありますので皆さんも古着の世界に足を踏み入れてみませんか?

 昔は足で探すのが古着でしたが、今ではほとんどの古着屋がブログ、ツイッター、 Instagramをやっており、現地での買い付け報告、入荷日の告知、セールの情報、 商品の紹介(通販)をしているので消費者としてはずいぶん楽になっています。 関西の人なら「大阪古着屋ポータルF-STREET」で 探すとよいでしょう。

 今回紹介したのは人や店によってはヴィンテージに入るのかもしれませんが、 古着の中ではわりとメジャーどころばかりなので(古着入門レベル)、 wego、スピンズ、シカゴ等の大手チェーンでも頑張って探せば見つかります。 この記事を作成するにあたり一応調べてきましたが、ノースフェイスの茶タグ、 ファイブブラザー、ビッグマック、519、スコットランド製ニット、 アメリカ古靴のデッドストックは全て見つかりました。

 もちろん、探すのは手間がかかりクオリティーに問題があるものも多いので、 オーナーがアメリカからピックしている個人店に行った方が効率は良いと思います。 きちんと選別されているので当たり率は雲泥の差です。

 古着はサイズ、状態、値段などで折り合いがつかないことが多々あり 年単位で少しずつ揃えていくことになります。 でもいいんじゃないですか、そういうスローファッションも。



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