おっさんだのオタクだの何かとやり玉にあげられるチェックシャツスタイル
ファッション界は「ふつう」ブームです。トレンドはノームコア風ファッションという「ふつう」が続いており、 ファッション誌を開けば毎号のように定番特集が組まれ、 ファッション書籍コーナーを覗けばおじさん向けのファッション指南書(ふつうのお洒落を目指す内容)が 次々と世に送り出されているという現状です。
私宛のメールにも「〇〇の定番ブランドやオススメを教えて欲しい」といった内容がよくきますし、 はてなブックマークにも「おじさん向けのお洒落指南が欲しい」というような コメントをみかけました。ファッションに正解を求める時代なのでしょうか。
そこで今回は、巷に溢れるお洒落指南の通りにやればおじさんでもお洒落になれるのか、 ネットのお洒落指南から本屋のファッション指南本まで結構な数に目を通してきた私自身が人柱となり 実践してみるという企画です。
とりあえず目指すのはピッティのイタリアオヤジではなくトレンドワードである「ふつう」のおじさんです。 チェックシャツ(羽織る)+チノパン+Tシャツという休日のおじさん スタイルこそまさにどこにでも見られる「ふつう」の格好であり、 体型さえ維持していれば特に問題ないとは思うのですが、 お洒落指南では鉄板のNGスタイルなのでおとなしくジャケパンスタイルでいきます。
■おじさんの「ふつう」のお洒落とは
女性が「おじさんっぽいなぁ」と思うファッションランキングより
ではまずはおじさんの年齢について。デブとぽっちゃり同様、 お兄さんとおじさんの境界線がよくわからないのでぐぐってみると、 30歳、35歳、40歳という意見が多いようです。 おじさんの定義を論じる内容ではないので、とりあえず年齢は30代を意識することにします。 40代、50代は私の実年齢から離れすぎており、 コーディネートの構築が難しいという理由もあります。
次に指針とする「ふつう」のお洒落について。 おじさんのコスプレをするならランキングを参考に組み立てればいいのですが、 ランキングのアイテムでお洒落を成り立たせるのは難易度が高すぎるので不採用(笑)
で、おじさん向けのファッション指南としてよくあるのが次の2点ですね。
1.定番であること
必要なのはセンスではなくて定番です。定番ブランドで購入し、定番アイテムを揃え、 定番のコーディネートをしたら失敗しないという理屈。 安くて品質が良いオススメのブランドとしてよく名前が上がるのがユニクロと無印良品。
2.ジャケパンスタイルであること
ジャケパンスタイルを軸に、ジャストサイズで、シンプルで、清潔感を心掛けます。 無地を選びコーディネートの色数もおさえる。ジャケットは体型を補正し女性にもウケが良いとされるスタイルです。
はたしてこれでお洒落になれるのか。前置きが長くなりましたが、 Before、After、代案付きの3本立てでお届けいたします。
■コスパ重視のアメトラ風スタイル【Before】
ありがちなクールビススタイルになりました
【ブランド】
ジャケット:J.Crew.(現行品。デッドストックで9,000円)
シャツ:無印良品(セールで1,500円)
パンツ:ユニクロ(セールで1,990円)
靴:ALDEN(古着で9,000円)
ベルト:CYPRIS(10,800円)
ニットタイ:ノーブランド(日本製のシルクなら百貨店の紳士市が安く2,500円)
※デッドストックは古着屋でよく見かけます
【着こなしのルール的なモノ(複数のお洒落指南書参考)】
・春夏のジャケットと言えば生地はコードレーンかシアサッカー
・ジャケットの一番下のボタンは留めない
・配色はサックスブルー×ベージュという夏の王道爽やか路線。
・コードレーンと言えばBrooks Brothersのスーツが元祖。 同じくBrooks Brothersが源流であるボタンダウンシャツ(サックスブルーor白)を合わせる。
・グレーのサマーウールのスラックスだとビジネス色が強くなりすぎるのでベージュのコットンパンツでカジュアルに。 ノータックのセンタープレス入りですっきりとした感じを出す。
・ボタンダウンシャツは評判の良い無印、パンツは定番のユニクロを選択。
・アメトラと言えば靴はローファー。足元は値段の高い上質な靴でコーディネートの格上げを狙う。
・靴とベルトの色は揃えるという基本を守る。
・アメトラの夏のネクタイは黒のシルクニットタイをプレーンノットで巻く(ディンプルはどちらでもOK)。
・手を入れていいのはジャケット片方のポケットのみという立ち振る舞いに気を付ける。
テーマにアメトラを選んだのは、ボストンメガネ、クルーネック、クルーカット、 BDのロール、ブレザーのパッチポケット、靴のつま先の形状、 穂積氏のイラストなんかもそうですがアメトラはなんか丸いですよね。 だから顔や体型に丸みを帯びてきたおじさんに似合うはずです。
コスパ重視にしたのは、セレクトショップに置いてあるような イタリアのブランドで全身揃えたら確かに洗練された感じにはなるのですが、 お値段が非現実すぎてそれはもう「ふつう」とは言えないと思います。 やはり「ふつう」にこだわるなら子持ちパパのお小遣いでも届くラインに設定し、 量販店も活用したいと考えたからです。
指南通りにやればたいていの人がこれに近い感じになると思いますが、 上のコーディネートがお洒落か否かは皆さんの判断にお任せします。 私の感想としては、清潔感があり、無地で、シンプルで、ジャストサイズで、ユニクロで・・・と やればやるほど没個性化し制服みたいになっていくなと。
そうなると、本人のパーソナリティーが浮き彫りになるか(イケメン有利)、 スーツと同じでディテールや素材に目が行くか(高い服有利)、 あるいはその両方かとなりますよね。上の画像は首から上を切っていますので ディテールの完成度(女性なら3首という言葉がありますよね)に目が行くと思います。 そこを見て、「今っぽい」「洗練されている」「地味」「古くさい」「素敵!抱いて!」等と 皆さんも判断しているはずです。
【垢抜けない理由】
つまり「ふつう」のおしゃれは何を買って何をどう組み合わせるかよりもディテールにトレンドが、 その組み合わせにファッション感度の差が出るというのが結論です。 これは同じトレンド、同じテイスト、同じブランドで揃えていればあまり問題にならないのですが、 定番なら何にでも合うだろうと適当にコーディネートするとディテールや素材の組み合わせがチグハグになることがあります。 机上ではなく実際に着てバランスをチェックしないとなかなか見えてこない定番の罠であり (定番もトレンドの影響を受けマイナーチェンジしていく)、 着画のない指南があまり役に立たないと言われる所以です。
上のコーディネートもディテールを見るといくつか改善点が見えてきます。 わかりやすい点だとパンツの裾幅と靴の形状の組み合わせ。 パンツはテーパードのかかった裾幅の細いタイプの方がローファーが映えるのかもしれない。 靴側から見るなら、つま先が丸くてコロンとしたローファーではなく、 トゥがやや四角くシュッとしているローファーの方がスラックス仕立てのパンツには合うのかもしれない。 そのあたりの微調整をしたのが下記のAfterになります。
■細身一辺倒からの卒業、どっしり構えてこそおじさん【After】
Beforeの大筋は変えないで細部を調整。え?変わってない?
【ブランド】
ジャケット:J.Crew.(デッドストックで9,000円)
シャツ:Brooks Brothers(古着で3,000円)
パンツ:BEAMS(14,904円)
靴:ALDEN(デッドストックで18,000円)
ニットタイ:ノーブランド(セールで2,500円)
【改善点】
・パリッとしたドレッシーな生地のコードレーンジャケットではないので パンツはミリタリー仕様のチノパンでよりカジュアルに振った。
・パンツのシルエットはおじさん世代が慣れ親しんだ66シルエット (個人的にカジュアルパンツは501の66シルエットが一番中庸だと思っている)。
・ジャケットのバランスがクラシック寄りなのでBDシャツもクラシック仕様にした (王道であるBrooks Brothersの襟幅は今も昔も8.6㎝と決まっている)。
・パンツの裾幅に合わせ靴はややゴツメのアメリカンな靴を (茶系の外羽根式を選びカジュアルに)。
・アメトラらしくくるぶし見せスタイル(撮影のために靴ひもを結ぶのはめんどうだったので横着しています)。
・この格好で鞄を持つならグルカのエグザミナーかという妄想 (妄想が人をお洒落にします、たぶん笑)
30代になると若い頃と比べ平均して体重が10㎏増えるそうです。 だんだん細身の服はつらくなってきますのでそれに執着せず、 細身一辺倒からの卒業をテーマにどっしりとした感じを出してみました。
インビジブルソックスが見えているのが若干間抜けな感じですが、 撮り直すのがめんどうだったのでこのままで。 隙のあるおじさんもお茶目で魅力的ではないでしょうか?ダメ?(笑)
ちなみにおじメン好き女子とデートするならシャツの第一ボタンを開け ネクタイをゆるめて堅苦しさを取り除いてもいいですし、 レストランに行くならパンツのロールアップを元に戻してきちんと感を出せばいい。 TPOの調整も容易で汎用性が高く流行にも左右されにくい、 私の考えるふつうのおじさんスタイルです。
ただ、トレンドを一切度外視した「ふつう」のスタイルはあまり「ふつう」には見えないんですよね。 理由は見慣れていないから。いくら着方の正しさを語ったところで、 一般的には「そんな奴おらんやろ~」状態。そこがトレンドの怖いところでして、 次は代案としてトレンドをある程度意識したスタイルに挑戦してみます。
■「ふつうだけどお洒落に気を使っている感」を狙ってみる【代案】
小奇麗さをキープしつつゆるく崩してみた
「Afterのどこが普通やねん!昭和のおっちゃんや!周りから浮くわ!」という突っ込みはごもっとも。 最近は年齢不詳の若々しいおじさんも増えましたので、 どっしり感より軽さを出したいというのもわかります。
実際問題、梅田や心斎橋などのオシャレスポットに行けばタイドアップした アメトラスタイルも見るのですが、地元のショッピングセンターや公園などではまず見ません。 「ふつう」を目指すならもっと崩す必要があります。
そこで組み立ててみたのがこのコーディネート。今はスポーティー、リラックスがトレンドなので、 流行のイージーパンツ仕立てのスラックス(ブランドはHEALTH)を持ってきました。 元はスラックスなのでジャケットや革靴と合わせやすいきれいめアイテム。 靴は最初のコーディネートで使ったローファー、ジャケットの下は適当にカットソー(ブランドはYAECA)を着ています。 これなら周りから浮くことはないと思いたい。これくらいのさじ加減でいかがでしょうか?
このコーディネートだと、ジャケットの着丈をもう少し短め、靴をニューバランス、鞄はバリスティックナイロンのザックを合わせ、 締めにキャップ、ソックス、メガネなどで味付けすれば話題の「サードウェーブ男子」スタイルの方向にもっていけますね。
そこまでトレンドを盛ると「ふつう」を逸脱する可能性が高くなるので、 トレンドアイテムを1~2点投入して後は適当くらいにしておくと 「ふつうだけどお洒落に気を使っている感」が出ると思います。 メンズはパンツからトレンドが変わると言われておりますので、 1点投入するならパンツが良いのではないでしょうか。
■まとめ
チェックシャツはEddie Bauerの山タグ時代の古着
冒頭のマドラスチェックシャツは悪くないんです。 ヴィンテージというわけではなく古着屋で3、4千円も出せば見つかるレギュラーですが、 インド綿、Made in USA、Vヘムポケット、脇の縫い合わせが チェーンステッチなど見所があり、ボタンダウン、プラケットフロント、 ボックスプリーツと実にアメトラらしいディテールも備えております。
問題は着方にありまして、せっかくのアメトラ向けのなので 「ボタンダウンの半袖マドラスチェック+オフホワイトのパンツ+タックイン(ベルトはしない)+スニーカー」という 『絵本アイビー図鑑の』テンプレを参考に着てみます。
タックイン後バンザイすると良い感じに胴回りが弛みます
私ならこのようにテンプレにアクセントとして黒のニットタイを足し(ゆるめておく)、 タックインなのにベルトしないの?と突っ込まれるのでベルトレスのオフホワイトパンツ(通称マックイーンパンツ)を用い、 大人らしくジャケットを携帯し、靴はデッキシューズで締め。
ファッションに正解はないのかもしれませんが、限りなく正解に近いテンプレはありますので、 それを知るためにファッション指南を読んでおくのも悪くはないと思います。 むしろ有用なので初めはどんどん読むべきです。
ただ、定番アイテムと着こなしのテンプレ知識はお洒落のベースにはなるものの、 そこからがスタートであり、おじさんのお洒落はディテールの組み合わせが肝になってきます。 個々のケースに応じた細かいファッション指南というのはありませんので、 結局、最後のディテールは自分で詰める必要があることに気付きます。 センスがある人を除き、遅かれ早かれ時間とお金をかけ試行錯誤することになるはずです。
そして「それ着てどこいくねん問題(お洒落しても着ていく場所がない問題)」もありますね。 教科書通り完璧にファッションスタイルを完成させても「お洒落に目覚めた不自然なおじさん」が できあがるだけであり、その格好にふさわしい場所が必要です。言い換えれば、その格好が自身の環境下でも「ふつう」になるとは限りませんので、 周りとの調和を考えて調整する能力が必要です。こちらも机上ではなく経験で学んでいくしかないですよね。 この記事を作成していて改めて「ふつう」って難しいなと思いましたよ。
近所のショッピングセンターや公園はこれくらいでいいよね
実際のところ、マドラスチェックシャツをオフホワイトのパンツに タックインというスタイルはあまり見かけることはないと思いますので、 チェックの色数を減らし、Tシャツは無地、そして詰まった首元をVネックに変えるだけで十分な気も。 今まで長々と書いてきたのはなんだったのかというオチですけども(笑)
おそらく、皆さんの中にも「おじさんのふつうのおしゃれ」像があり、 言いたいことが山ほどあるかと思います。モノ申したい方は、皆で共有したいので 画像付きでメール(宛先rejectionrole5686@mail.goo.ne.jp)を送っていただければこのブログで紹介します。 皆さんからの「俺的ふつうのおじさんスタイル」の投稿お待ちしております。
この記事へのコメント
taro
個人的な感覚では、「1」が正に普通(垢抜けていないとは思わない)、「2」は適度に流行も取り入れたバランス、「3」は、普通と言うにはちょっと崩し過ぎかな?と感じます。
痩せ型にはカットソー+ジャケットは難しい気がします。メリハリのある体型の方がうらやましいですね。
hato
チェックシャツですが、箪笥を見るとオンブレチェックが一枚、他は無地のオックスフォードと見事に無難で世間様に後ろ指を指されたくない保守派のおっさん箪笥でしたね、、、
masato
私は以前と比べると、服装はシンプルになりました。一方で、帽子を使うようになりました。帽子で一番気にっているのは、super duper hatsの帽子で、ブランドのサイトのSpring Summer 2013のLook bookにあるもの。金色と白っぽい色の縞模様の帽子です。カンカン帽って、昔は日本人も普通にかぶっていたんですね。和服に合わせていたようです。ヨーロッパだとスーツにステッキという姿。アメリカだとジャズのミュージシャンが被っていましたね。そもそもは、水兵さんの帽子だそうです。だから本物は、しっかりできていますし、さらにニスで固めるそうです。私のも伝統的な製法なので硬いし重量がありますね。派手な色柄はモダンですけど。パーキングを歩いていた時に、女の子の帽子と勘違いされました(笑)今は、女性もコレをかぶりますしね。