ヴィンテージの魅力を知りたいなら『VINTAGE MENSWEAR』を読んでみては

ヴィンテージ・メンズウェア (SPACE SHOWER BOOks)ヴィンテージ・メンズウェア (SPACE SHOWER BOOks)
ジョシュ・シムズ ダグラス・ガン ロイ・ラケット 田代 文(たしろ あや)

スペースシャワーネットワーク 2013-09-28
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 世界トップクラスのヴィンテージショップ「The Vintage Showroom」のコレクションの うち150点を集めて紹介しているのが本書『VINTAGE MENSWEAR』です。ロンドンに拠点を置くショップだけに、 バブアー、バーバリー、グレンフェルなどイギリスのブランドが多く収録されています。

 チャックテイラー(コンバース)、リバースウィーブ(チャンピオン)、 アイリッシュセッター(レッドウィング)、イーストウエストのレザージャケット (ハイブランドが元ネタによく使う)などファッション誌でよく見るヴィンテージの常連は登場せず、 ヴィンテージの象徴的存在リーバイス501すら出てきません。 変わったところだと、日本の野良着や軍服も収録されており、 Lightning系(えい出版)のヴィンテージ本とは一線を画すセレクトになっています。

 コンテンツはスポーツウェア、ワークウェア、ミリタリーウェアの3つのセクションに分けられており、 これは「The Vintage Showroom」のオーナーがファッション性より機能性を追求した、 技巧的・デザイン的に意味のあるものを収集しているため。 特にミリタリーが充実しており、こちらもM65、M51、ジャーマントレーナーなどのベタなところではなく、 山岳救助隊のような機能的に見所があるアイテムを多くセレクトしています。


 惚れ惚れするような渋い写真(ディテールもきちんとクローズアップしている)を 眺めるだけでも楽しめますが、当時の生活、社会状況、服飾、ブランド、スポーツ、 ミリタリー、地誌、映画などからもそのヴィンテージの背景を掘り下げているので読み応えもあります。

 例えば、誰もが知っているバーバリーのステンカラーコート(ウォーキングコート)に 関する記述がこちら。

このコートのデザインは、1950年代の新聞広告が「これは最も人気のあるモデルで、 トマス・バーバリー氏によるオリジナルデザインそのままの作りです」と謳った通りのもの。 「クラシカルなカットで、どのような場にも着ていただけます。’パンティーン襟、フライフロント、ボタン留めポケットに加え、 ストラップとボタンがついたバックベント・スリーブを採用。すべての縫い目を生地で覆い、ステッチを施しています。 チェック柄のライニングは、ウールかコットン、または混紡からお選びいただけます」。 しかし、言葉を尽くしたセールスとは裏腹に、このコートの人気の秘密は実用的でルーズフィット、 しかも防水機能まで備えたアウターという、その汎用性にあった。

この後、防水という点からバーバリークロスの話に移っていくわけですが、 バーバリーのコートで一番人気はトレンチコートではなくステンカラーコートだったようです。 さらにその人気の秘密はルーズフィットにあったと。

 古着でサイズ感を気にする人も多いかと思いますが、バーバリーの良さを、 ヴィンテージとしての雰囲気を生かすならルーズなサイズ感でも構わないということがわかります。 背景を知ると着こなしも変わりますよね。


 今の若者向けのファッション誌を開けばほとんどが「モテ」重視です。 その多くが清潔感とジャストサイズを基本としたベーシックなスタイルを提案しており、 小汚い格好、うんちく、ルーズサイズは女性(読モなど)の座談会では批判対象です。 それが今のトレンドなので、この3つを避けては通れないヴィンテージ(古着)が下火になるのも 自然な流れなのでしょう。

 違う見方をするなら、マイナス点を探していき(周りの評価を気にして)選択肢を絞っていく。 それが今時だと思っています。結果、無難でみんなと同じようなアイテムの選択やスタイルに落ち着く。 マイナス点が目に付きやすい古着(ヴィンテージ)が選択肢から真っ先に外れるのも仕方ないなと。

 ただ少しくらいサイズが大きかろうと、状態に難があろうと、デザインが古くとも、 そんなのが気にならないくらい、どうしようもなく惹かれる古着(ヴィンテージ)ってあるんですよね。

懐古主義を抜きにしても、1960年代以前のメンズウェアに見られる気品や上質さは、 現代のものからはほとんど失われてしまっている。その理由の1つは、現代の 大量生産型経済は一流デザインや高級品へ資本を出し渋る傾向があるということ。 さらに、今や特定の職業や活動に使用される服はあからさまに専門服として扱われ、 実用性かファッション性かどちらかに偏る傾向にあることも要因の1つと言えるだろう。

短靴に使われている革の質感。コットンの張り。カシミアの分厚さ。デニムの色落ち。 そして着用したときの圧倒的な重量感。マイナス点が霞むほどの魅力を備えている ヴィンテージがあるのもこれまた事実です。

 多くの方がそれに出会っていないだけで、知りさえすればどんどん深みにはまっていく。 1つでも惹かれる点があればだんだんマイナス点にも目を瞑れるようになる(そのうち見えなくなる 笑) それがヴィンテージの魔力みたいなものなので、本書を読んで興味を持たれたら 是非とも実物を見に古着屋巡りをして欲しいと思います。



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