史上最強カラー図解 世界服飾史のすべてがわかる本 能澤 慧子 ナツメ社 2012-02-21 売り上げランキング : 175416 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
昨年は『史上最強カラー図解 世界服飾史のすべてがわかる本』 『美人の歴史』 『20世紀からのファッション史: リバイバルとリスタイル』 『ファッション・ブランドとデザイナーと呼ばれる戦士たち』 『スニーカー文化論』等ファッションの歴史に関する本が多数発売されました。 ここ数年、歴史ブームと言われておりますがファッションにもその流れが来たのでしょうか?
機会があれば各々の本についてレビューでも書こうかと考えておりますが、 歴史に関する本はめんどくさそうであまり読みたくないですよね。わかります、その気持ち。 しかし、先日「 世界史勉強してない奴のために各国の歴史を簡単に書く」という2chまとめを読み、 箇条書きスタイルで歴史を簡単にまとめたら服飾史に興味を持ってもらえるのではないか?と思ったので、 同じノリで面白おかしく書いてみることにしました。
レディスを含めると中世からボリュームが増え近代で大変なことになるのでメンズのみ。 トピックを10程度に削り流れを掴めるようまとめてみたつもりです。 では古代ギリシア時代からスタートです。
【古代ギリシア】肉体美礼賛
全てのお洒落は筋肉に通ず。古代ギリシア人にとって衣服で表面的に着飾るなど野暮もいいところ。 急所である性器と頭くらいは保護していたようで腰巻と頭巾を身に付けていた。
【古代ローマ】トゥニカ
体毛を見せるとダサイと言われるから布(トゥニカ)を体全体に巻きつけておくか。
【ゲルマン民族大移動】チュニック(ローマ人)VS長ズボン(異民族)
長ズボンを着用したゲルマン人が度々南下。チュニック(≒ワンピース)のローマ軍と激突。 カエサルは手記に記す「ゲルマン人の童貞パワーなんぞこれ。好戦的すぎる」。 ゲルマン民族大移動の頃にはすっかり異民族スタイル(オリエント含む)に感化され 長ズボンはローマに定着していた。
【十字軍遠征】ブリオー。戦争時はその上からチェーンメイル
やっぱ長ズボンは戦闘用だしタイトな服はめんどくさいよね? チュニックにタイツという今の時代から見たら女装的な服装になり長ズボンが廃れる。 このチュニックはブリオーと呼ばれていた。 遠征によりオリエント文化のボタンがもたらされたり仕立て屋が現れたりする。 話が長くなるので以下略。
【百年戦争】トップスとボトムが分かれ二部形式に
弓がチェーンメイルで防ぎきれなくなりプレートアーマ登場。 武装の変化でブリオー邪魔すぎと丈が短くなる。これにより服が上下二部形式に。 この時代から男女の服が大きく分離していく。そして時代はダブレット(三銃士スタイル)へ。
【宗教改革】服飾史における元祖「黒の衝撃」
スペイン黄金の世紀到来。スペインのモード(厳格さとしての黒)がヨーロッパを圧巻。 黒は宗教改革の色としても使われた。しかしフランスはこれをスルー。 ゴージャス路線を突き進む。ルイ14世の頃にはモードの中心はフランスへと移行。
【衣服改革宣言】スーツの原型誕生
ペスト流行るし、ロンドン大火が起きるし、同世代のルイ14世はハイヒールはいちゃって妙にお洒落だし・・・。 そうだ!イメチェンをしよう。ゴージャスなお隣に対しシック路線で行くか。 1666年イギリスのチャールズ2世が衣服改革宣言。英国式スーツ(ツーピース)の誕生。
【フランス革命】半ズボンVS長ズボン
サン・キュロット(半ズボンはかない下層市民)VSキュロット(半ズボンをはく貴族)により 貴族の美脚アピールが瀕死に。もうやめて!貴族のライフポイントは0よ!と半ズボンが目の敵にされ粛清される。 しかし華やかな貴族スタイルを好むナポレオンが後にこれを復活させる。
【ダンディズムの開祖】禁欲主義、服装の簡素化、ウール地推し
フランス革命と同時期、イギリスの近衛隊に入り、快楽王ジョージ4世(BL疑惑が指摘されている)のお洒落指南役として抜擢されたのが ジョージ・ブライアン・ブランメル。フランスの文学者たち(例:ボードレール、スタンダール)も せっせとブランメルの神話作りに加担。現代の紳士服が地味なのは彼らのせい。
【ワーテルローの戦い】半ズボンVS長ズボンの最終決戦
半ズボンを復古したナポレオン。そのフランス軍を長ズボン派のウェリントン率いる イギリス・オランダ連合&プロイセン軍が破る。これによりメンズのファッション 発信地「イギリス>フランス」が決定的に。また勝者であるウェリントン公はブーツ、 ブリュッヘル(プロイセン軍総司令)はブルーチャー(外羽根式靴)と靴の歴史にも名を残す。
【1860年頃】ラウンジスーツの登場
夕食後ラウンジルームでくつろぐのはいい。が、テールコートの裾が ソファに座るとき気になって仕方がない!そうだ、テールのないジャケットをアリにしよう。 ラウンジスーツ(現在のスーツの原型)の誕生。
【現在】ビジネスウェアに
ラウンジスーツが改良。ビジネスウェアとして世界的に普及。
派手か簡素か。半ズボン(露出)か長ズボンか(隠す)。着丈が長いか短いか。 振り子のように行ったり来たり。極端から極端に移るのが今も昔も流行(モード)ですね。 イラストもないし大雑把だし何が何だからよくわからない!と気になった方は 服飾史の本を是非読んでみてください。「世界服飾史」として洋服が語られるときは だいたいヨーロッパの歴史のみ。アジア、アメリカ、アフリカなどの民族衣装は基本的に出てきません。 冒頭で紹介した本もそんな感じです。日本に関する記述もたった12ページです。
服飾史を知って何の役に立つのか?と思う人は下記の画像をご覧くださいませ。
モンクレールガムブルー2013A/Wです。この股間の前のポーチ何なの!?と思いませんでしたか?(笑) これも服飾史を知っていれば「コッドピース」が元ネタだと推測がつきます。 ヘンリー8世の時代はズボンの前開き部に詰め物をして「男性性」を強調したのです。 コッドピースは小物入れも兼ねており、果物、貨幣、菓子(飴)などが入れられていたそうです。 トムブラウン氏はそこから着想しポーチにしたのではないでしょうか。
それともう一つ。ヘンリー8世時代、肩に詰め物をして四角く雄々しいシルエットを 作る「ボンバスト」というのも流行りました。トムブラウン2013A/W(特にファーストルック)の あの巨大な四角さはそこから着想したのかもしれません。と、こんな感じで服飾史を知っていれば 妄想を楽しめますよ(笑)
「政治もファッションも同じ。新しい発想や挑戦ができていない。最近までのファッション業界は 20世紀の総決算をしてた。それもやりつくしちゃったから、この秋・冬は14~15世紀の クラシックがくる!なんて言ってる」
2013年に流行するファッションとしてドン小西氏がこう予測しております。 仮にこれがその通りだとするなら、ちょうど服飾史を学ぶのに良い頃合いではないでしょうか。
<追記>
モンクレールガムブルー2013A/Wのポーチはスポランとの指摘をメールでいただきました。頭の中がすっかり中世になっており失念しておりましたが、コレクション全体を見てもスコットランドのキルトが見て取れるので元ネタはスポランだと思われます。ご指摘ありがとうございました。
この記事へのコメント
燕
きっと風邪薬のせい、、笑
dale
その突っ込みはくるのだろうなぁと思っておりました(笑
燕
daleさんはもうチェック済みだとは思いますが